2013-04-26

小説: 森橋ビンゴ, 東雲侑子は短編小説をあいしている & 東雲侑子は恋愛小説をあいしはじめる

ver.1.0 2013-04-26
ver.2.0 2013-07-14 (侑子を佑子と誤変換していた箇所を修正。)


出版社シリーズ名: ファミ通文庫
書籍名: 東雲侑子は短編小説をあいしている
著者名: 森橋ビンゴ
イラストレーター: Nardack
ジャンル: 高校生の日常
出版社: 株式会社 エンターブレイン
初版発行日: 2011年10月12日
価格: 600円+税
備考1:第1巻
備考2:巻頭のカラーイラストにネタバレがあるので、何かが起こるところまで読むまでカラーイラストを見ない方が良いです。


解説1
イラストがNardackということでこの小説を買って、それだけで満足して1・2ヶ月読まずに放置していましたが、読んでみたらとても面白かったので紹介します。

その面白さを説明するのが難しいです。

まず小説本文が始まる前に短編小説の1頁があります。よく小説の冒頭に他の小説のある一部分が数行だけあることがありますが、短編小説の1頁があることはまずありません。ほとんどの人は「これはいったい何だろう?」「小説のタイトルから登場人物の一人に違いない東雲侑子が好きな短編小説なのかな」と思うでしょう。この短編小説の続きは小説本文の区切りがつくごとに1頁だけ挿入されます。
この短編小説の終り方については、小説本文に作者名とタイトルが出てくるある短編小説またはその映画化された映画の内容を知っていると理解することができます。
そしてこの架空の世界が舞台の不思議な短編小説の内容の意味が本当にわかるのは、2巻を読み終わって再び1巻を読んでいる途中になります。

ネタバレというほどでもない、おおざっぱなお話の始まりのあらすじ
高校に入学したばかりで、友達を作ろうともしなかった少年・三波英太(みなみ えいた)が主人公です。本には興味がないのにしかたなく図書委員になった三波は本の返却と貸し出しをやるカウンター当番の退屈な作業をしています。三波はあまりに退屈なため、カウンター当番が同じスケジュールであるもう一人の図書委員の少女・東雲侑子(しののめ ゆうこ)に話しかけます。
後述しますが東雲の外見の描写がないのでどういう見た目の少女なのかわかりません。その理由の一つはただいつも同じ当番の日に横に座っていた人だからです。女性として認識していないということです。
無表情で無感情で無口な東雲は、当番中に用がない時はいつも本を読んでおり、三波が話しかけている時も本から目を離しません。
放課後に出入り口が混んでいる教室で三波は時間潰しのため東雲に話しかけ、東雲はどちらかというと短編集が好きだが「俺は読むなら長い話のほうがいいけど」と言います。東雲が長編より短編集を好きな理由は独特でとても複雑でした。東雲は本を読むことにしか興味がありません。
話は三波の自宅へと移り、家には三波の初恋の人である兄の彼女がいつも来ており、兄の彼女はそれを知らずに親しげに三波に絡んでくることを三波が苦い思いでいることが分かります。



解説2
この小説の構造として特徴があるのは「登場人物たちの外見についての描写がほとんど無い」ことです。「登場人物たちはしぐさや口調」で描写されています。
小説は主人公の少年である三波英太(みなみ えいた)の一人称で進むので三波の外見がわからないのはしごく当然です。(イラストはありますが)
東雲侑子(しののめ ゆうこ)は表紙絵にイラストがあるので読者はその絵の通りにイメージが固定されてしまいますが、小説本文では東雲の外見の描写があまりありません。そのもう一つの理由は、東雲のしぐさ、無言で首を軽くかしげるなどで東雲の魅力を表現しているからです。
そして東雲は無表情で無感情で、喋る時は喋りますが基本的に無口なので、三波は東雲が何を考えているのかわかりません。三波は東雲に話しかけ(ほとんどは日常会話です)その返答や態度の三波の受け取り方に、読者はそのうちなんとなくそれが当たっているか的外れであるかが分かるので、「いやそれは違うんだよ」と思いながら読み進めるわけです。主人公の少年と少女の繊細な交流を見るのが面白いのです。


裏表紙のあらすじ
何事にも無気力、無関心な毎日
を過ごす高校生、三波英太。楽
そうだからという理由だけで図
書委員になった彼は、ともに委
員を務める東雲侑子の熱のない
静けさに、自分の空虚さに似た
ものを感じていた。しかし偶然
彼女の秘密を知ってしまったこ
とから、自分との違いを思い知
らされる英太。だが、その秘密
のために、彼女と距離を縮める
こととなり、失ったはずの感情
に胸を締めつけられていく……。
早熟な少年少女に贈る、もどか
しく苦いラブストーリー。

記事を作るにあたって初めて裏表紙のあらすじを読みました。小説の内容はあらすじの文末のいわゆる「ラブストーリー」とはちょっと違うので、上記のデータでのジャンルは「高校生の日常」にしました。「少年と少女の交流」が正確な表現でしょうか。





出版社シリーズ名: ファミ通文庫
書籍名: 東雲侑子は恋愛小説をあいしはじめる
著者名: 森橋ビンゴ
イラストレーター: Nardack
ジャンル: 高校生の日常
出版社: 株式会社 エンターブレイン
初版発行日: 2012年1月5日
価格: 600円+税
備考1:続編の第2巻
備考2:巻頭のカラーイラストには特にネタバレというようなものはありません。

寝る前の夜中に読み始めた第1巻を読み終わったら朝になっていて、その日の夕方に急いでこの2巻を買ってきて夜中ごろに読破しました。

1巻でもかなり登場頻度が高い本の虫である(読書家)三波の兄の浮気疑惑を兄の彼女から聞かされるということから始まる話です。
この2巻は続編ですが、内容的には1巻と密接に繋がっており、1巻と2巻は前後巻のような感じです。

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