2012-09-04

SF小説: SFマガジン創刊50周年アンソロジー <時間SF傑作選> ここがウィネトカなら、きみはジュディ

ver.1.0 2012-09-04


出版社シリーズ名: ハヤカワ文庫SF
書籍名: SFマガジン創刊50周年アンソロジー <時間SF傑作選> ここがウィネトカなら、きみはジュディ
編集者名: 大森 望
ジャンル: 時間SF
出版社: 株式会社 早川書房
初版発行日: 2010年9月25日
価格: 940円+税

最近ラノベ(=「ライトノベル」、昔の「ジュブナイル(少年少女文学)」に相当する)ばかり読んでいたので久しぶりにSFが読みたくなり本屋のハヤカワ文庫コーナーを眺めていたところ、「ここがウィネトカなら、きみはジュディ」という不思議なタイトルが目についたので手に取り、時間SFアンソロジーだったので買ってみました。

最初の3つの短編を読み終わった頃と半分ほど読み終わった頃は「このアンソロジー集は興味がある人だけどうぞ」とするつもりでしたが、最後に収録されているこのアンソロジー集のタイトルでもある「ここがウィネトカなら、きみはジュディ」が傑作だったのでお勧めしておきます。


SFマガジン創刊50周年アンソロジー 全3巻
1. <宇宙開発SF傑作選> ワイオミング生まれの宇宙飛行士
2. <時間SF傑作選> ここがウィネトカなら、きみはジュディ
3. <ポストヒューマンSF傑作選> スティーヴ・フィーヴァー




<時間SF傑作選> ここがウィネトカなら、きみはジュディ

(第一部 時間ロマンス篇)

01. 商人と錬金術師の門 (2007)
テッド・チャン
主人公の男が教主に「千夜一夜物語」風に何人かの人物が未来や過去の自分に会いに行った話をする。よく出来ている。

02. 限りなき夏 (1976)
クリストファー・プリースト
読み始めは設定がよくわからない。第一次世界大戦(1900年初頭)が始まった頃の古い風景の雰囲気はかなり良い。ネタバレになるので詳しくは書かないが、男が40年前にプロポーズした時を回想する。

03. 彼らの生涯の最愛の時 (2009)
イアン・ワトソン&ロベリト・クアリア
設定は少々科学的ではないが良い話。18歳の少年が65歳か70歳の女性を生涯唯一の愛する女性と決めることから始まる。

04. 去りにし日々の光 (1966)
ボブ・ショウ
作家の短編集の中の一編の短編という感じ。数年前の風景を映す「スロー・ガラス」のお話。


(第二部 奇想篇)

05. 時の鳥 (1985)
ジュージ・アレック・エフィンジャー
悪くは無いが良くも無い。旅行会社へお金を支払ってタイムトラベルして過去へ行くお話。

06. 世界の終わりを見にいったとき (1972)
ロバート・シルヴァーバーグ
微妙。旅行会社へお金を支払ってタイムトラベルして地球の終末を見に行くお話。

07. 昨日は月曜日だった (1940年代?)
シオドア・スタージョン
シオドア・スタージョンは有名だが内容は微妙。SFでは無い。男が月曜日の夜に寝たが起きたら水曜日だった。小男たちが家具や道路や乗用車を古くみえるように加工している。というお話。

08. 旅人の憩い (1965)
ディヴィッド・I・マッスン
このアンソロジー集の中で唯一SFらしい舞台設定のSF。古典SFみたいだと思ったがこの記事を作っている時に1965年と知って納得した。戦争の前線から距離が離れるに従って時間の流れる速度が速くなっていく。一兵士であった男が解任の命令を受け民間人となり前線から遠く離れた地域で暮らすお話。


(第三部 時間ループ篇)

09. いまひとたびの (1947)
H・ビーム・パイパー
世帯大戦で負傷し死につつある43歳の男の意識が30年前の13歳の時の自分の体に戻る話。良い雰囲気で面白い。だらだら長く書かずに短くまとまっている。

10. 12:01PM (1973)
リチャード・A・ルボフ
この短編も短くまとまっている。1時間の時間のループに閉じ込められる男のお話。

11. しばし天の祝福より遠ざかり…… (1981)
ソムトウ・スチャリトクル
1960年代のSFテレビドラマシリーズ「The Twilight Zone」の中の一話みたいな印象を受けた。地球全体が異星人により七百万年もの間、全員が記憶を持ったまま全く同じ一日を繰り返すループに閉じ込められるお話。ただし一日のうち2時間だけ休憩時間があり自由に行動することが出来る。

12. 夕方、はやく (1996)
イアン・ワトソン
これも古典SF小説みたいだと思ったら古くはなかった。一日を繰り返すが、一日の始まりから終わりまでを約八百年の人類の文明の進歩の始まりから終わりまでを繰り返すお話。

13. ここがウィネトカなら、きみはジュディ (1974)
F・M・バズビィ
設定は「スローターハウス5」にちょっと似ている。普通の人間は生まれてから死ぬまで順番に生涯を生きていくが、主人公の男は記憶を持ったまま自分の生涯の様々な断片的な期間にランダムに意識が飛ばされ生きていくというお話。


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