2011-10-22

幻想小説: 瑞智士記, 展翅少女人形館

ver.1.0 2011-10-22
ver.1.1 2011-10-22 (補足するために、読み直しても気付かない程度に記事全体に若干手を加えました。)

この小説のお勧めはしませんが、球体関節人形がテーマの小説はめずらしいので紹介します。風変わりな小説です。


出版社シリーズ名: ハヤカワ文庫JA
書籍名: 展翅少女人形館
作者名: 瑞智士記
ジャンル: 幻想小説
出版社: ハヤカワ文庫
初版発行日: 2011年8月25日
価格: 760円+税



ネタバレにならない おおまかな あらすじ
物語の舞台は仏蘭西(フランス)と西班牙(スペイン)の国境にある必里尼斯(ピレネー)山脈にある修道院。
時代を推測すると西暦2100年から西暦3000年の間。しかし景色は17世紀の欧羅巴(ヨーロッパ)。未来的な描写はほとんど無く、機械は「機関(オルガヌ)」の老紳士エリック・ジャントビアンが乗る電子制御の車椅子しか出てこない。
人類は球体関節人形しか出産しなくなってしまって(今この文章を読んでいる人は理屈や意味がわからないと思いますが)人間は老人ばかりになってしまい、人類がまさに絶滅してしまう寸前の時代のお話。
人類の滅亡を食い止めようとしている「機関(オルガヌ)」の指令によって、人間として生まれた希少な存在である少女たちが修道院に保護されている。絵本を読んだりお菓子を食べるのが好きな仏蘭西(フランス)人で十三歳のマリオン・ユベールと双子の姉リゼット・ユベール、事実上滅亡した文化であるバレエのレッスンに打ち込む露西亜(ロシア)人の十五歳のミラーナ・レドフスカヤ、一人称に「僕」を使う性格が少年的な西班牙(スペイン)人で十六歳のフローリカ・デ・ルシアである。やがて修道院に倫敦(ロンドン)の没落したテューダー家の一人娘であり九歳とは思えない会話をする高慢なビアンカ・プリムローズ・テューダーが送られてくる。この少女たちの交流がゆったりと描かれる。

感想
・雰囲気は全体的に明るいです。文章は古典海外小説のような感じですが読みやすいです。
・胎内で受精卵が人形に変質してしまうという、著者が見た夢をそのまま小説にしたような感じの非科学的な設定の物語です。この小説は深く意味を考えてはいけないタイプの小説でしょう。
・ミラーナが演ずるバレエ「コッペリア」の場面は素敵で壮絶でした。
・小説の後半から読んでいてそれほど楽しくは無い少女同士の同性愛的なエロティックな描写が若干あります。ここまでは特に何とも思いませんでした。
・マリオンとユベール、ユベールとフローリカの話なのかなと思っていたら、唐突にフローリカとビアンカの話になってしまう。第一部と第二部に分けるべきです。
・全体の2/3を過ぎたあたりで唐突に始まったフローリカとビアンカのやり取りにドン引きしてしまった箇所がありました。その箇所だけ浮いています。それさえなければ俺のこの小説への評価はもっと高ったでしょう。
・物語の始めに提示された謎とその解明と、物語の終わり方は面白かったです。人間が人形を出産する理屈の説明は最後までされません。

裏表紙のあらすじ
人類が球体関節人形しか出産でき
なくなって数十年。この現象の謎
を探る〈機関(オルガヌ)〉は、奇跡的に人の
姿で誕生した少女たちをピレネー
山中の修道院に隔離していた。バ
レエに打ち込むミラーナ、いまだ
幼い泣き虫マリオン、人形細工師
のフローリカ・・・・・・三人の情熱と因
縁のもつれが臨界に近づく頃、新
たな客人が招かれる。だが、それ
は彼女たちの運命をより過酷にす
る新たな事件の幕開けだった━━
退廃のゴシックSFファンタジー

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